悪意の遺棄とは|悪意の遺棄に当てはまるケースと基礎知識

悪意の遺棄(あくいのいき)とは、民法770条第1項で定められた法定離婚原因のひとつで、法律的には「夫婦は同居しお互いに協力し助け合わなければならない」という義務果たさないことを指します。

また、法律用語としての“悪意”とは、一般的に使われているような「悪いことをしようとする意思」ではなく、「ある事実を知っている、もしくは知りつつある」という状態のことを指します。ですから「悪意の遺棄」とは先述の義務を果たさなければ、上手くやっていくことが難しくなるということを認識しており、かつ、そうなっても一向に構わないという不誠実な心理や態度で義務を放棄することを表します。

 

悪意の遺棄に当てはまる3つの義務違反

悪意の遺棄に当てはまるには以下3点の義務に違反していることが条件となります。

  1. 『同居義務違反』:住まいを共にする義務
  2. 『扶養義務違反』:配偶者を養い、補助しなければならない義務
  3. 『協力義務違反』:協力して家庭を築く義務

しかしながら、夫婦のあり方は十人十色で上記3点の条件を満たすことができない家庭もあることでしょう。ですから、実際に悪意の遺棄に該当するかは個別のケースで鑑みていくことになり、判断が難しい離婚事由といえるでしょう。

また、『扶養義務違反』と『協力義務違反』は社会通念上、許されないであろうという行為が該当しますが、『同居義務違反』に関しては見解が別れることが多々あります

扶養義務違反と協力義務違反について

扶養義務と扶養義務に関しては、分けて考えるのではなく、夫婦はあらゆる場面において協力扶養し合わなければならないと一括りにして考えるのが一般的です。

  • 【扶養義務違反】生活が苦しくなることが分かっているのに生活費を渡さない。
  • 【扶養義務違反】収入を全て賭け事に使ってしまう。
  • 【扶養義務違反】病気もなく、健康なのに働かない。
  • 【協力義務違反】専業主婦なのに全く家事をしない。

このような事が当てはまる場合は該当すると言えるでしょう。

同居義務違反について

同居義務違反に関しては非常に判断が難しいものと言えます。近年ではお互いに同意の上で別居状態にある“別居婚”など、新しい形の夫婦関係もみられます。また別居の理由が出稼ぎ、単身赴任、子供の学校関係、夫の暴力、愛人と同棲する、などの別居では悪意の遺棄とまでは認められません。
「理由もなく急に出て行き、家庭を顧みない。」などでないと認められることは難しいでしょう。

 

結婚の義務に違反はしているが悪意の遺棄には当てはまらないケース

例えば別居していたとしても仕事の関係でやむを得ず別居しているケースはよくあることでしょう。当てはまりそうだが、当てはまらない可能性の高い事例を列挙しますので参考にしてみてください。

  • 生活費を渡さないことの方が多いが時々は渡す。
  • 姑と上手く関係性を築けないので別居している。
  • 夫がDVをしてくるため家を出て別居状態にある。

ちなみに、悪意の遺棄は法律で定められた離婚原因ではありますが、実務上は判断の難しい微妙なケースが多いため“悪意の遺棄”として該当しそうなものの実際には“婚姻を継続しがたい重大な事由”として主張をしていくことが多くなっています。

別居の期間について

何ら正当な理由無くして、別居状態となった場合は悪意の遺棄に該当しますが、ある程度の期間、別居状態が継続していることが条件となります。ただ、難しいのは日本国内においてその尺度に明確な線引きがないことです。
外国の法律では、1年、2年、3年など国によって明確な基準が有りますが、国内では1年別居しても離婚を認めないケースもあれば、わずか2ヶ月で“悪意の遺棄”に該当するとした判例もあります。

恐らく、裁判所としては、別居期間の長さではなく、相手が別居の事実をどう捉えていたかが重要と判断する傾向にあるのだろうと思われます。ご自身の場合該当するかどうかは個別に弁護士へご相談されることをお勧めします。

5年間別居していたら離婚できる?

現時点では、5年間別居期間が継続しているだけでは、離婚は認められません。平成8年2月26日に法制審議会が決定した「民法の一部を改正する法律要綱」にて悪意の遺棄の延長としてではなく、法定離婚原因に“夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。”が盛り込まれてはいますが、国会には提出されておらず今後提出されるかどうかも未定という状態です。
法務省:「民法の一部を改正する法律案要項

しかし、婚姻関係は極力継続すべきものだという立場から婚姻関係が事実上破綻しているのであれば無理に継続させる必要はないという立場に変化してきており、その結果として法定離婚原因に“夫婦が五年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき。”が盛り込まれた経緯があります。
ですから、今後導入される可能性が全くないという訳ではないでしょう。

ただ、そうすると一方の配偶者が身勝手な理由で離婚したいがために、この離婚原因を悪用するかもしれないという指摘もでており、とりわけ専業主婦やパートタイマーの女性などの経済的に不安定な配偶者を極端に不利にすると批判されています。

今後の注視するべき点といえるでしょう。

 

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ABOUTこの記事を監修した法律事務所

2016年1月に寺垣弁護士、佐藤弁護士の2名により設立。現在の在籍弁護士は14名(2018年1月時点)。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。