離婚と年金分割|分割できる年金の種類と年金分割の全手順

年金分割(ねんきんぶんかつ)とは、夫婦の共同財産として積み立てられた厚生年金保険料を決められた割合で分割することを言い、専業主婦が離婚した場合の年金水準の低さを解消するために始まった制度です。

専業主婦の年金水準の低さを解消するため、平成16年に法律が改正されて離婚後に夫の年金の一部を分割してもらえるようになりましたが、年金の内容としては、専業主婦の場合に夫が払った保険料の一部を妻が払ったものとして、最大半分の年金を獲得することができます。

年金という以上、熟年離婚の際に年金分割の問題が出てきますが、年金額が増えれば少なからず老後の生活の心配が減ることが挙げられます。特に専業主婦が離婚をする際には非常にありがたい制度ではあるので、どうすれば有効に活用できるのかをご紹介していこうと思います。

 

年金分割とは|離婚時に知っておきたい年金分割の4原則

離婚時の年金分割制度とは、離婚後に配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割してもう一方の配偶者が受け取れるという制度です。主に夫の年金を妻がもらうという形が一般的ですね。

そもそも年金制度には職業に応じて「国民年金」「厚生年金」「共済年金」のいずれかの制度に加入することになります。また、年金制度はよく3階建ての建物に例えられますが、下記のような違いがあります。

1階 国民年金 3階の1階部分にあたる年金で、自営業者や学生などが加入しています。保険料は月額15,250円(平成26年度現在)
2階 厚生年金共済年金 3階の2階部分にあたる年金。厚生年金は会社員などが加入し、厚生年金加入者は同時に国民年金に加入している。「共済年金」は厚生年金と同じく3階建ての2階部分で、地方公務員、私立学校の教職員の人が加入しています。
3階 企業年金 3階の3階部分にあたる年金。会社では国民年金基金、厚生年金基金、企業年金です。なお、共済年金では職域加算部分となります。

この年金分割という制度は、平成16年に導入されました比較的新し制度でもあるので、意外と知らない方も多いと思いますので、まずは基本的な4原則からご紹介していこうと思います。

1:年金分割が出来るのは会社員と公務員の年金だけ

年金分割の対象になるのは、会社員が加入している厚生年金と公務員が加入している共済年金のみに限られます。厚生年金と共済年金は、「基礎年金」に「報酬比例部分」を上乗せする2階建てですが、分割できるのはこの2階にあたる「報酬比例部分」と呼ばれる部分だけです。

夫が自営業の場合では報酬比例部分がないので、「年金分割」はできないことになっています。詳しくは後述の「年金分割の対象になる年金」をご覧ください。

2:年金分割の対象は結婚期間の部分のみ

多くの方が「夫の年金の半分はもらえるはず」と思っていますが、年金分割の対象になるのは報酬比例部分のうち、結婚していた期間に対応する分だけとなります。

例えば、夫が22歳で会社員になり28歳で結婚、45歳で離婚した場合では、年金分割が行われるのは28歳から45歳の期間の分となり、結婚前期間と離婚後の期間は含まれないことになります。また、分割できる年金はその期間に対応する年金の2分の1が上限となっているため、必ず半分がもらえるわけではありません。

3:年金分割をして受け取るのは65歳から

年金分割をして得られる年金は、本人が年金を受け取るとき(原則65歳)に上乗せされる形で支払われます。つまり、離婚したらすぐにもらえるわけではないのです。

また、年金受給資格期間(現在は25年。後々10年に短縮される予定)を本人が満たしていない場合は年金自体がもらえませんし、分割した部分すらもらうことはできないのです。しかし、元配偶者が死亡したり自分が再婚したとしても、離婚時に分割した年金を受け取る権利はなくなりません。

4:請求期限は離婚してから2年以内が原則

年金分割は、離婚した日から数えて2年以内に年金事務所で手続きをしないと受け取ることはできません。黙っていればもらえると思っている方も一定数いらっしゃいますが、自動的にもらえるわけではないので、注意が必要です。

 

離婚時の年金分割には2つの分割方法がある

年金分割には「合意分割制度」と「3号分割制度」があります。それぞれの違いを知った上でどちらを選択すればいいのか考えてみましょう。

合意分割

合意分割制度とは、夫婦間の合意もしくは裁判所の決定で厚生年金や共済年金の分割を決める制度です。分割対象は婚姻期間中に夫婦両者が支払った厚生年金と共済年金の納付記録を合計したもので、その分割割合は夫婦の話し合いや裁判所の決定により異なりますが、最大の割合は半分となっています。

1:夫婦間の合意で決まる

年金分割の割合が夫婦間の話し合いで合意にいたった場合、合意した内容を第三者に証明できるならば年金分割手続きが可能となります。その方法は2つあります。

  1. ①合意内容を示した公正証書の謄本か抄録謄本または公証人の認証を受けた私署証書を年金事務所の窓口に持参する。
  2. ②離婚当事者もしくは代理人が年金分割請求を年金事務所窓口に提出する際に、話し合いで合意した年金分割の内容を記載した書類を提出する。

2:調停で決まる

離婚調停の内容の一つとして年金分割の按分割合を協議します。また離婚成立後も按分割合を決定する調停を申し立てることは可能です。

3:審判による場合

年金分割についての合意が得られない場合に申し立てることになります。調停で年金分割を協議したものの合意を得られず不成立であった場合には、審判に移行します。

3号分割

平成20年4月に施行された年金分割制度が3号分割制度です。3号分割という意味は、第3号被保険者であるサラリーマンの専業主婦が利用できる制度だからです。分割対象は平成20年4月以降に配偶者が支払った厚生年金保険料の納付記録です。

分割の割合は例外なく半分となります。この制度では当事者である夫婦間の合意は不要であり、当事者は下記の分割手続きを踏めば年金分割を獲得することができます。

合意分割 3号分割
離婚日 平成19年4月1日以後 平成20年4月1日以後
夫婦間の合意 按分割合(分割することおよび分割割合)について必要。合意ができないときは裁判に分割割合を決定してもらう。 不要
分割対象期間 婚姻期間(平成19年4月1日以前も含む) 平成20年4月1日以降の婚姻期間のうち、第3号被保険者であった期間
分割割合 2分の1が上限 2分の1
請求期限 原則として、離婚日の翌日から2年以内 原則として、離婚日の翌日の2年以内
対象者 第3号被保険者だけでなく、第1号被保険者、第2号被保険者でも可能 第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者であって、20才以上60才未満の者)のみ

年金分割を合意分割か3号分割かを選ぶ基準

合意分割と3号分割、それぞれの制度は似ているようで異なるものです。しかし、両制度を同時に利用できることを知っておきましょう。両制度を利用できる条件を満たしていれば、どちらか一方の制度を申請すれば自動的にもう一方の制度も申請したとみなされます。

つまり、より多くの年金を得るためにどちらかを選ぶのかと考える必要がないのです。

 

年金分割の対象となる年金の種類

年金の種類にはいわゆる全国民共通の年金制度である1階部分の「国民年金」(基礎年金)と、会社員と公務員の年金制度である2階部分の分割の「厚生年金」、そして会社独自の年金制度である企業年金や公務員独自の制度である「職域加算」の3種類があります。

厚生年金と共済年金のみ

年金分割の対象となるのは、厚生年金と共済年金の部分だけであり、1階部分の国民年金や厚生年金基金と国民年金基金などは対象とならないことはすでにお伝えした通りです。

bunkatsuもし、あなたの夫が会社の経営者や自営業者や農業従事者などで、厚生年金や共済年金に加入していない場合、年金分割の対象とならないのです。

結婚前の厚生年金と共済年金は分割の対象外

また、その分割対象となる厚生年金と共済年金に対しても、婚姻期間中に納められた保険料を分割されます。そのため結婚前に納められた厚生年金と共済年金は分割の対象となりません。

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つまり、夫が将来受け取る予定の年金金額の半分を妻が受け取れる制度ではなく、婚姻生活中に積み立てられた保険料の納付実績に基づいて、年金の分割を受ける制度であるため、思い違いがないように注意しなければいけません。

年金分割制度のメリットは配偶者が自分よりも多く年金を支払っていた場合のみ

さらに、あくまでも年金分割制度を利用するメリットがあるのは、婚姻期間中に配偶者が厚生年金・共済年金を自分より多く支払っていた場合のみであることを知っておきましょう。

 

年金分割の手続きと進め方の手順

年金分割の割合は夫婦間の話し合いや調停・裁判で決定されますが、半分に分けるケースが多く、熟年離婚をした場合、月々受け取れる額は3〜4万円が相場となっています。

では、実際に年金分割を行う際の手続きや手順などを見ていきましょう。

合意分割で年金分割を進める場合

離婚時の合意分割制度による年金分割は以下のような手続きが必要です。

  1. 年金情報通知書を手に入れる
  2. 年金分割の割合を決める
  3. 年金分割の申請

1:年金情報通知書を手に入れる

年金分割には必ず年金の情報が記載されている「年金分割のための情報提供通知書」が必要です。この通知書を手に入れるには以下のことを行います。

  1. 年金分割のための情報提供書の作成【サンプル
  2. 年金事務所に書類を提出
  3. 年金情報通知書を受け取る

年金情報通知書を受け取った後にやることは、年金をどれくらいの割合で分けるのかを決めなければいけません。決める方法は、以下の4つですが、それぞれの決定方法によって手続きが異なるため、注意が必要です。

  1. 夫婦間の話し合い
  2. 離婚調停
  3. 離婚審判
  4. 離婚裁判

2:夫婦間の話し合いで分割割合が決定

当事者双方もしくは代理人が近くの年金事務所にて、年金分割の改定請求を行います。代理人を立てる場合は委任状が必要です。請求には以下の書類が必要です。

  1. ・年金分割の合意書
  2. ・元夫婦双方の戸籍謄本
  3. ・双方の年金手帳

3:調停・審判・裁判のいずれかで分割割合が決定

夫婦間のどちらか一方が年金事務所にて手続きを行います。手続きには以下の書類が必要です。

  • 調停調書など年金分割について決定された謄本
  • 夫婦両者の戸籍謄本
  • 年金手帳

一方、離婚時の3号分割制度による年金分割は以下のような手続きが必要です。第3号被保険者(サラリーマンの専業主婦)が年金事務所に行って請求することで自動的に半分に分割されます。

3号分割で年金分割の請求を進める手順

3号分割は年金記録を分割してほしいと思えば1人で年金事務所で手続きができ、夫婦間の合意も不要になります。分割割合は2分の1ずつと決まっており、夫婦間で分け方(按分割合)を決めることはできません。

具体的な手順としては、年金分割をしてもらいたい側が、離婚後に必要書類を揃えて年金事務所へ行って「年金分割の標準報酬改定請求」を行うだけで完了です。

3号分割の手続

請求者の現住所を管轄する年金事務所に標準報酬改定請求書を提出し請求します。この際は以下のものを持参しましょう。

  • 標準報酬改定請求書【サンプル
  • 離婚届
  • 年金手帳
  • 戸籍謄本
  • 公正証書(※)
  • 調停調書(※)
  • 確定判決(※)

(下から3点は合意分割も利用する場合のみ)

 

離婚時の年金分割で獲得できる年金を増額させる方法

年金分割を受けた場合、実際にはどの程度の年金が増えるかは気になるところだと思いますので、そのあたりも確認していきます。

50歳以上のときは年金見込額が照会可能

合意分割の場合、50歳以上の時または障害年金を受けている場合に、「年金分割のための情報提供請求」を行う際、年金分割をした場合の年金見込額を照会することが可能になります。

「年金分割のための情報提供請求書」によって情報提供請求をした人しか情報提供を受けられませんが、見込額を知りたいときには、年金分割をされる側も、自分で「年金分割のための情報提供請求書」を出す必要があります。

結果は、「年金分割を行った場合の年金見込額のお知らせ」という題名の書類で届きますので、そちらで確認してみると良いでしょう。

照会できないときは自分で概算する

50歳未満で障害年金を受けていない人は、残念ながら試算してもらうことはできませんので、自分で行う必要がありますが、年金計算のルールは多少複雑なものではありますが決まっているものですので、あてはめて試算することが理屈上は可能です。

概算での説明になりますが、1年間の厚生年金加入で額面月収(ボーナスは月割して加算)の約6.6%が1年間の年金額だとお考え下さい。

計算例

無収入の妻が、ボーナスも含めて1ヶ月あたりの額面給料が30万円の夫と3年で離婚したとした場合、年金分割割合50%とすると・・・

30万円×6.6%×50%×3年=29,700円

ここから年金分割をすると妻の65歳以降の年金額が29,700円/年ほど増え、夫の年金額は29,700円/年ほど減ることになります。年金は生きている限り支払われますので、もし20年間受給されれば60万円近い違いになってきます。熟年離婚で婚姻期間が長い場合には、年金分割による年金額への影響が大きくなってくると言えますね。

年金分割を交渉の材料にする

仮に裁判所に年金分割の判断を求めた場合、0.5以外になるのが珍しいため、50%以外の分割割合で交渉するのは、はっきり言って労力の無駄でしょう。

であれば、離婚の際に「離婚そのものに応じるかどうか」や「親権者の決定」「財産分与や慰謝料の額」支払をどうするかという交渉において、「年金分割を請求しない代わりに慰謝料を増額」などの交渉材料に利用したほうが無難かと思います。

年金分割を受けることによって増額する側が、分割後に夫婦の標準報酬総額の何%になるかを示したものを 『按分割合』 と呼びます。

調停や裁判を起こす

もし話し合いでも分割割合がまとまらない場合、家庭裁判所の調停や裁判で決定するという方法があります。必ず結果が出ますし、正当に認められた権利であれば確実に主張は通るはずですので、半分の年金は獲得できるはずです。

この時弁護士がいれば様々なメリットが生まれますが、詳しい内容は下記の記事を参考にしてください。

 

離婚時における年金分割の注意点

離婚時の年金分割における注意点も確認しておきましょう。

年金を渡さないと言われた場合

年金分割について、まずは話し合いを行うことが第一ですがそこで話がまとまらない場合は、家庭裁判所による調停に話し合いの場を移すことができます。調停員を交えて分割割合を話し合っていくことになります。

もし調停を行っても夫婦間で年金分割に合意できない場合は、家庭裁判所の審判で決定することができます。それでも合意が得られない場合は、裁判に発展しますが離婚における裁判は離婚件数全体の1%ほどしか発生していないため、ほとんどないと思っていても大丈夫でしょう。

妻から夫へ行われることもある

ここまで見てきた例は妻が夫からいくらかの年金分割を受けるというものでしたが、その逆もありえるのです。なぜなら、年金分割は夫から妻へと分けるものではなく、年金の多い方から少ない方へ分けて夫婦間で不平等を減らそうという制度だからです。

そのため、夫婦共働きで妻が厚生年金などの加入し、夫よりも納付額が多ければ妻から夫へ分割されるケースも起こりえます。

再婚しても離婚時の年金分割に影響はない

一度合意を得た年金分割は、その後の再婚には影響されません。年金分割とは、婚姻期間中の所得が夫婦共同で稼いだものだからその収入から納めた厚生年金の保険料も夫婦共同で納めたものしているからです。そのため、その後再婚したとしても年金額が減ったり増えたりすることはないのです。

年金分割の期限は2年まで|もし過ぎてしまった場合は?

年金分割の期限は離婚成立から2年以内ですが、相手が死亡すると死亡から1ヶ月に短縮されます。2年あると思って後回しにすると期限が過ぎていたということがありえますので、早めに行うことに越したことはありませんが、もし期限を過ぎてしまった場合は弁護士に相談されるのが良いかと思います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ややこしく思える年金分割も整理して考えればシンプルな仕組みであることがわかります。しかし、獲得できる年金額が最大半分とは言え、思ったより少ないものかもしれません。それぞれの夫婦で額も変化するため、ご自身の受給できる年金額を一度確認されてみてはどうでしょうか。

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ABOUTこの記事を監修した法律事務所

2016年1月に寺垣弁護士、佐藤弁護士の2名により設立。現在の在籍弁護士は14名(2018年1月時点)。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。