熟年離婚と財産分与|妻が夫の退職金と年金を獲得する為の全手順

近年増加しつつある熟年離婚。熟年離婚に至る原因や理由も大きな問題ですが、この熟年離婚で重要なポイントの一つに財産分与で退職金や年金がいくらもらえるのかということです。財産分与の際についつい忘れがちな退職金や年金を財産分与に含めるかどうかで、受け取れる額が変わってきます。

離婚後の生活で先立つものはやはりお金ですので、熟年離婚時に受け取れる権利のあるものはしっかり受け取っておけるよう、今回は熟年離婚時の財産分与の割合などについてご紹介していきます。

 

 

熟年離婚における財産分与の割合と相場

熟年離婚になると、思い違いなどによって財産分与で揉め事が起こりやすくなります。そこで財産分与の基本的な情報を知っておきましょう。

財産分与の支払いは8割が夫から妻への支払い

裁判所の司法統計によれば、財産分与の支払いは夫から妻へ支払われるケースが約8割となっています。昔と比べると女性の社会進出が進んできたとは言っても、専業主婦の数は未だに多く、女性が得られる生涯年収も男性と比べると低いままというが現状です。

また、貯金や不動産も夫名義の場合が多いため、財産分与を行う際には“夫から妻へ”という形式が多くなるのは、ある意味当然と言えば当然ですね。

表:平成27年の司法統計における財産分与支払者の統計

支払者 総数 100万円以下 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 2000万円以下 2000万円を超える 算定不能
6823 1804 877 909 538 702 545 234 1214
1052 351 143 129 74 78 38 13 226
夫の支払割合 86.6% 83.7% 86.0% 87.6% 87.9% 90.0% 93.5% 94.7% 84.3%

参考:離婚調停の成立又は審判における財産分与の取り決め

財産分与の割合は2分の1が基本

財産分与は婚姻期間中に夫婦で築いた財産が対象になります。その財産をどの程度の割合で分けるかどうかは、財産を築き維持するなかでどのくらい貢献したかが重要です。

裁判所の判断では、基本的に2分の1ずつ分けることになり、専業主婦の妻に収入がなくとも、外で働く夫を家事などで支えたことが、夫婦で財産を作ることに貢献したと判断されるからです。

表:平成27年の司法統計における財産分与の割合

総数 50% 40%以上〜50%未満 30%以上〜40%未満 20%以上〜30%未満 10%以上〜20%未満 10%未満
件数 8396 8269 52 27 14 1

参考:離婚調停の成立又は審判における財産分与の取り決め

分与として受け取れる金額の相場

財産分与の対象となる財産は婚姻期間中に築いたものなので、婚姻期間の長い熟年離婚はスピード離婚する夫婦に比べると、多額の財産分与を受け取れることになります。

婚姻期間が25年を超える夫婦の場合、財産分与額が100万円以下の夫婦は10%満たないですが、600万円を越える夫婦は832件で50%を超えています。

表;平成27年の司法統計における財産分与の支払額別婚姻期間

婚姻期間 総数 財産分与の取り決めあり
総数 100万円以下 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1000万円以下 2000万円以下 2000万円を超える 算定不能
総数 26,648 7,875 2,155 1,020 1,038 612 780 583 247 1,440
6ヶ月未満 219 21 15 3 1 1 1
6ヶ月以上 746 78 51 10 6 6 1 4
1年以上 2,066 273 180 57 15 7 4 1 9
2年以上 1,957 346 199 62 31 9 6 4 1 34
3年以上 1,627 330 168 47 41 17 8 9 1 39
4年以上 1,485 345 156 61 45 21 20 4 1 37
5年以上 1,375 316 141 53 41 11 12 8 3 47
6年以上 1,385 294 112 43 43 15 22 3 3 53
7年以上 1,188 304 113 40 42 18 22 12 5 52
8年以上 985 274 80 38 43 26 25 8 1 53
9年以上 998 308 90 51 41 19 30 13 3 61
10年以上 1,011 318 81 54 54 30 21 28 50
11年以上 866 275 66 43 44 16 15 14 5 72
12年以上 915 301 82 33 44 21 28 19 7 67
13年以上 847 279 77 26 44 15 33 23 4 57
14年以上 766 244 61 33 44 18 23 12 4 49
15年以上 711 270 51 36 35 23 34 23 7 61
16年以上 628 238 52 35 35 17 32 15 3 49
17年以上 626 228 34 31 36 22 27 21 5 52
18年以上 581 223 52 22 30 17 21 18 11 52
19年以上 549 210 36 15 24 26 29 14 6 60
20年以上 1,969 825 121 92 121 81 101 87 34 188
25年以上 3,139 1,575 137 135 178 176 267 247 142 293
不詳 9

 

熟年離婚で財産分与を請求する方法

熟年離婚をする決意をしたあとに、財産分与を請求する場合は以下の流れを参考にしてください。

財産分与に含まれる財産は?

共有財産

夫婦の共有名義で得た財産、例えばマンションを共同名義で購入した場合がこれにあたりますし、共同で家計に収入をもたらした場合も該当します。つまり、夫名義の収入であっても、妻の協力によって得られた共有財産と考えることもできますので、コツコツと貯めたへそくりも夫婦の共有財産ということもできるでしょう。

マイナスの財産も財産分与の対象

例えば、マイホームを購入して住宅ローンが残っている場合、そのローンも財産分与の対象となり、夫と妻の両方で負担しなければなりません。しかし、ギャンブルなどの浪費で作った借金の場合は財産分与の対象とはならず、借金を作った当事者が責任をもって負担することになります。

固有の財産は財産分与の対象外

財産分与の基本的な考え方は、法律上は婚姻前から持っていた財産や、婚姻期間中に自分で得た財産、親から相続した財産は、その人の単独の財産となります。つまり、結婚前から持っていた財産はそれぞれのものです。

協議離婚による話し合い

財産分与の金額については夫婦間でまず話し合いましょう。この場合お互いの財産をはっきりとさせる必要があります。公平な判断が難しければお互いの合意の上で自由に財産分与の取り分を決めることができます。具体的な話し合いは、夫婦が同居しているか別居しているかによって異なります。

同居している場合

同居している場合は、お金の問題なので話しにくいかもしれませんが、直接交渉をしましょう。

別居している場合

別居している場合は、会って話せるならいいですが、そうでない場合は証拠が残るやり取りをおすすめします。メールや内容証明郵便などでお互いの意見を交換するといいでしょう。

話し合いで決まらなければ調停で

夫婦間の話し合いがまとまらなければ調停で争います。このケースでは離婚調停によって離婚するかどうかと合わせて財産分与について交渉するか、財産分与請求調停で財産分与についてのみ交渉するかが選べます。

申立てに必要な書類

財産分与調停の申立てに必要な書類は主に以下のようなものです。

  • ◆調停の申立書とその写しを1通ずつ
  • ◆離婚時の夫婦の戸籍謄本
  • ◆財産目録
  • ◆夫婦それぞれの財産に関する書類
    • (給与明細、預金通帳のコピー、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書など)

申立ての費用

調停の申立てにかかる費用は以下の金額です。

  • ◆収入印紙:1200円分
  • ◆郵送用の郵便切手:800円分程度(裁判所によって異なります。)

申立て先

住所地を管轄している家庭裁判所へ申し立てましょう。

最終的には裁判で決着をつける

もし調停でもお互いが財産分与に対して納得できなければ、訴訟によって裁判をおこします。離婚裁判で離婚問題と財産分与について問題を解決するのです。

法的な離婚原因が必要

裁判で離婚するには法的な離婚理由が必要です。その離婚理由は民法770条に定められている以下の5項目です。

  1. ①不貞行為
  2. ②悪意の遺棄
  3. ③3年以上の生死不明
  4. ④回復の見込みのない強度の精神病
  5. ⑤その他、婚姻を継続しがたい重大な事由

参考:法律上必要な離婚原因5つ

証拠が重要

裁判での結論を左右するのは証拠です。財産分与で有利な条件の判決を得るには、相手の財産目録や給与・退職金明細などの証拠を揃えておく必要があります。

 

熟年離婚の際の財産分与では退職金も請求できる

退職金は財産分与の対象となる財産ですが、退職前には確実に支払われるかわからいので注意が必要です。そのため、退職金が支払われていない場合と受け取っている場合に分けて見ていきましょう。

財産分与の計算方法

財産分与は婚姻期間中に働いた期間を対象に行われます。そのため、30年間勤務していてもそのうち婚姻期間が20年間なら、退職金から10年分の金額を引いた額を財産分与の対象とします。

また、別居歴があればその期間は婚姻期間と認められないため、その年数分の金額も差し引く必要があるのです。

退職金が支払われていない場合

退職金が支払われていない状況では、退職金が支払われる可能性の度合いによって財産分与の対象にするかどうかが判断されます。その可能性を判断する基準は4点あります。

①会社に退職金を支払う規定があるかどうか

大前提として、会社が退職金を支払う規定を設けているのか確認しましょう。雇用契約書や就業規則に記載されています。

②会社の経営状況

退職金を受け取ろうにも、会社が途中で倒産してしまっては受け取ることができません。そのため、財産分与する段階で会社の経営状況が安定しているのかどうか判断しましょう。

③配偶者の在籍期間

退職金は会社への在籍期間に応じて支払われることが一般的です。そのため転職回数が多く、会社への在籍期間が短い配偶者では、十分な退職金が望めません。配偶者がどのように会社に貢献しているのかも、財産分与に退職金を含めるかどうかの判断基準になります。

④退職金が支払われるまでの期間

定年退職で退職金を受け取れるまでの期間が長すぎると財産分与の対象にはなりにくい傾向があります。現実的に受け取りが見込めるかどうかが論点になるのです。

すでに退職金を受け取っている場合

このケースでは、退職金の金額がそのまま財産分与の対象となります。ただ、退職金を受け取ってから時間が経っており退職金の対象となる財産が残っていなければ財産分与の対象とならない可能性があるので注意しましょう。

年金分割も請求対象になる

年金も財産分与の対象となることを知っていましたか?これは働いた夫のほうが妻よりたくさんの年金を受け取れるため熟年離婚した場合、妻が不利になることを防ぐために設けられました。

しかし、対象となる年金は、共済年金と厚生年金であり、国民年金は対象となりません。財産分与として年金を受け取れるように夫婦が納得した場合でも、妻の年齢が年金受給年齢になっていなければ、年金は受け取れないので注意しましょう。
参考:離婚と年金分割|分割できる年金の種類と年金分割の全手順

 

熟年離婚における財産分与請求の注意点

財産分与を請求する際に知っておくといい2つのことをご紹介します。

自分に離婚原因があっても財産分与は請求できる

財産分与は、あなたが不倫などで離婚原因を作ってしまっても請求することができます。財産分与はこれまで夫婦で築いた財産を貢献度に応じて平等に分けることを目指すので、離婚原因があるかどうかには左右されないのです。

財産分与には一応3つの種類がある

財産分与には以下の3種類があると言われており、最高裁判所でも3種類の財産分与を認めています。

清算的財産分与 結婚後に形成した財産の清算をすることで、もともと自分のものだった財産を公平に払い戻してもらう行為。
扶養的財産分与 離婚することで生活が困難となる配偶者の扶養を目的としたもので、その分も考えて,多めに財産分与をしてもらいます。
慰謝料的財産分与 離婚によって精神的な苦痛を被った場合の賠償に使う場合で、その苦痛の分も考えて多めに財産分与してもらいたい時に使います。

ただ、離婚調停などで争っている場合、財産分与と慰謝料請求は別途に請求できるものですので、精神的苦痛の賠償は全て慰謝料の争いとして交渉すれば良いと思います。

財産分与請求権の消滅時効は離婚後2年

財産分与の請求は、離婚が成立してから2年が経過すると時効となってしまい請求することができません。離婚後でも財産分与請求は可能ですが、相手が話し合いに応じてくれないことや、財産を処分されてしまうおそれがあるため、できれば離婚前に財産分与の交渉をしておくといいでしょう。

相手がなかなか財産分与に応じてくれない場合は、離婚問題に強い弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

熟年離婚の財産分与は、退職金や年金分割などが含まれ、金額も大きくなりがちなのでトラブルが起こる可能性が高いです。お互いが納得できる財産分与ができるように、今回の記事で紹介した点を注意しながら話し合ってみてはどうでしょうか。

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ABOUTこの記事を監修した法律事務所

2016年1月に寺垣弁護士、佐藤弁護士の2名により設立。現在の在籍弁護士は14名(2018年1月時点)。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。