熟年離婚の慰謝料相場と慰謝料以外に獲得できるお金について

熟年離婚の件数は近年増加傾向にあります。結婚してから25年〜30年以上の夫婦による熟年離婚は特に多く、熟年離婚の件数は、ここ10年足らずで約2倍に増加しているというデータもあるほどです。
参考:熟年離婚の9つの原因と離婚を決意する理由|離婚向けて考える事

熟年離婚に至る原因は様々ですが、何らかの原因で離婚する際は、離婚原因を作った相手に慰謝料の請求ができます。わかりやすいのは不倫やDV、モラハラといった内容ですが、気になるのはその時に獲得できる慰謝料の相場ではないでしょうか。

離婚時の慰謝料は婚姻関係が長いほど増額するという傾向があるため、もし不倫などによる不貞行為があり、その期間が長ければかなり高額な慰謝料の請求ができます。そこで今回は、熟年離婚による慰謝料の相場や、慰謝料以外に獲得できるお金について、ご紹介していきます。

 

 

 

熟年離婚で慰謝料が獲得できる場合とできない場合

慰謝料の性質は相手方の不当な行為によって精神的苦痛を受けた場合に、その存外賠償として請求できるお金になります。

具体的な例としては・・・

  • 身体的・精神的な暴力(DV・モラハラ)
  • 不貞行為(不倫・浮気)
  • 悪意の遺棄(生活費を渡さないなど)
  • セックスレスの場合 など

こういった事情がある場合には慰謝料の請求ができます。

 

熟年離婚の慰謝料の相場

よく慰謝料の相場は50万円から300万円と言われていますが、結論から言うとこの数字にはあまり根拠がなく、離婚に至った原因によって変動していくのが実態です。

不倫や浮気などで不貞行為があった場合

不倫を原因とする慰謝料は100万円〜500万円が相場と言われていますが、状況によっては100万円を下回る場合や、逆に500万円を上回るケースもあります。裁判所の司法統計では平成10年までの慰謝料がいくら支払われたのかが公表されていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか
参考:不倫の慰謝料の相場と慰謝料を少しでも増額させる為の全知識

DVやモラハラがあった場合

この場合の慰謝料の相場は50万から300万の間で変動します。具体的には、身体的・精神的暴力の状態や経緯、回数、さらにはケガの程度や後遺症の有無によって、慰謝料はどの程度が妥当なのかを検討して決めます。
参考:DVで離婚する際の慰謝料相場と慰謝料を増額請求する為の方法

悪意の遺棄があった場合

悪意の遺棄で獲得できる慰謝料の相場は、50万円〜300万円と言われており、離婚の慰謝料同様にかなり高額な慰謝料額になります。悪意の遺棄とは、婚姻関係にある夫婦間に定められた「同居の義務」「協力義務」「扶助の義務」に対して違反をした場合の、離婚原因となる理由のことで、代表的な例は「生活費を渡さない」「理由のない別居」「健康な夫が働こうとしない」などが挙げられます。(民法第752条)

【関連記事】
悪意の遺棄で離婚する際の慰謝料相場と慰謝料を増額させる方法

セックスレスがあった場合

セックスレスでも慰謝料は請求することはできますが、その時にきになるのはセックスレスの慰謝料相場がいくらになるのかということですが、慰謝料の相場は約50万円から100万円になります。

ただ、セックレスとなった事情や原因などのもろもろの事情を含めると300万円を超えるケースもあるため、一概に相場を算出することは難しいと言ったことが言えます。
参考:セックスレスで離婚する際に高額な慰謝料を獲得する手順

熟年離婚は婚姻期間が長いため相場以上になる可能性が高い

熟年離婚の場合、何十年も専業主婦でやってきた人もいれば、ずっと共働きだったケースもあります。ただ、この年で専業主婦が離婚する場合、社会経験からも遠ざかっている配偶者のことを考慮して、慰謝料や財産分与、年金分割などを含めるとかなり高額な慰謝料額になることが多いでしょう。

婚姻期間 6ヶ月未満 6ヶ月以上 1年以上 2年以上 3年以上 4年以上 5年以上 6年以上
慰謝料額(万円) 138 141 169 177 228 229 265 269
婚姻期間 5年以上 6年以上 7年以上 8年以上 9年以上 10年以上 20年以上 25年以上
慰謝料額(万円) 265 269 311 352 353 534 699 740

 

慰謝料をできるだけ増額させる要素や証拠

もらえるものはもらいたいというのが人の常ですので、慰謝料を増額させる為の証拠などをみていきましょう。

離婚の方法によって慰謝料の相場が変わる

協議離婚の場合は100万円から500万円で変動

熟年離婚の時の慰謝料も同様で、慰謝料の相場は条件によって変わりますから一概には言えないのですが、協議離婚の場合は100万円~500万円の間で変動していきます。

裁判離婚の場合は300万円から500万円の間で変動

一方、協議離婚では慰謝料の話についてまとまらない場合、離婚調停に進み、そこでも不成立なら離婚裁判で決める必要がありますが、裁判では証拠の有無によって金額がきっちり変わってくるため、精神的苦痛の度合い、離婚後の生活における経済的な能力、社会的地位、支払い能力、結婚期間の長さや未成年の子供の有無などさまざまなことを考慮して公平に決められ、500万円以上の高額になることもあれば、逆に証拠が一切なければ0円になります。

不貞行為の場合

  • 3回以上のラブホテルに出入りしている写真
  • 最低40分以上ラブホテルに滞在していたこと
  • 不倫関係の場合は5回以上相手宅に出入りしている写真
  • 不倫・浮気を認めた旨を録音した音声

配偶者と不倫相手が共にホテルに入り数時間後(翌朝)に出てくる場面の撮影したものや、メール・写真・着信履歴などは有効な証拠になります。
参考:不倫・浮気の証拠の見つけ方と離婚に有効な証拠集めのコツ

DVやモラハラの場合

DVやモラハラの慰謝料を増額請求する為には、DVの被害を受けていたことがわかる証拠が必要不可欠になります。

  • DVでケガをした際の病院の診断書
  • DVでついたあざや傷の写真
  • DV・モラハラの内容を具体的に記録している日記やメモ
  • DVやモラハラ被害について親や知人に助けを求めた内容の証言
  • 警察や公的機関へのDV相談の記録 など

DVやモラハラがあったことを証明する上記のような証拠を用意しましょう。

悪意の遺棄の場合

多少の違いはありますが、おおよそ以下の3つがあれば確実でしょう。

  • 生活費の振り込みが途絶えたことがわかる通帳の記録
  • 別居に至った経緯、別居がいつ始まったかという記録
  • 別居先を特定できる資料、賃貸借契約書 など

もし、生活費だけは送ってきても愛人宅に入り浸っている、家出を繰り返すなどの場合は、弁護士などにプロに相談されるのが良いと思います。

セックスレスの場合

具体的には以下のような証拠を取っておくと良いでしょう。

  • セックスレスであることをつづった日記
  • なぜセックスレスになったかが客観的にわかるもの
  • いつからセックスレスになったのかがわかるもの
  • 外でセックスをしていたことが証明できるもの
  • 就寝のタイミングの状況を記載したもの  など

実際に有効となる証拠かどうかわからない場合は、一度弁護士に相談されるのが良いかと思います。

 

熟年離婚による慰謝料の請求方法

熟年離婚でも、通常の離婚時に慰謝料を請求するのと同じように、

  1. まずは話し合いや内容証明郵便で請求する
  2. 話し合いでまとまらなければ離婚調停を申し立てる
  3. 調停でも決まらなければ離婚裁判を行う

この手順で進めていくことになります。詳しくは「離婚慰謝料の相場とできるだけ慰謝料を高額請求する方法」をご覧いただければと思います。

 

熟年離婚で慰謝料以外に獲得できるお金

ある意味慰謝料よりも需要なのが「財産分与」「退職金」「年金分割」の3つのお金です。専業主婦が離婚をする際は特に年齢のことも考えるとこのお金は獲得しておきたいところですね。

財産分与

まず財産分与の基本的な考え方として、法律上は婚姻前から持っていた財産や、婚姻期間中に手にした財産、親から相続した財産は、その人の単独の財産となります。配偶者が専業主婦(主夫)であろうと関係ありません。

財産分与の対象になる財産

婚姻期間中の財産については大きく分けて3つに分類されます。

・固有財産

婚姻前から持っていた財産、親から相続した財産が該当します。

・共有財産

夫婦の共有で手にした財産のことで、マンションを両方の名義で購入した場合が該当します。

・実質的共有財産

夫婦の名義のどちらか一方であっても、実質的な内容を考慮して夫婦の共有財産とみなすものをいいます。

財産分与の割合

財産分与の割合は、原則的には半分ですが、夫婦の話し合いで自由に決めて良いことになっています。ただし、財産分与の話し合いがスムーズにいかない場合は、離婚してから2年以内に、家庭裁判所に対して財産分与の調停を申し立てる必要があります。

退職金

退職金も広義の意味では財産分与の対象になる財産です。退職前には確実に支払われるかわからい金額の為、退職金が支払われていない場合と受け取っている場合に分けて考えておく必要があります。

どのくらいの退職金が請求できるのか?

後述しますが、退職金が支払われている場合、退職金をもらうために妻がどれだけの貢献をしたのかが基準になり、具体的には、夫婦の婚姻期間や、夫の勤続年数を基準にして計算されます。

退職金を受け取っていない場合

夫に退職金が支払われていない場合、退職金が支払われる可能性の度合いによって財産分与の対象にするかどうかが判断されます。その可能性を判断する基準は4点あります。

①会社に退職金を支払う規定があるかどうか

会社が退職金を支払う規定を設けているのか確認しましょう。

②会社の経営状況

もし、会社が途中で倒産してしまった場合は退職金が支払われませんので、財産分与する段階で会社の経営状況が安定しているのかの判断が必要です。

③配偶者の在籍期間

退職金は、配偶者がどのように会社に貢献しているのか、財産分与に退職金を含めるかどうかの判断基準になります。

④退職金が支払われるまでの期間

定年退職で退職金を受け取れるまでの期間が長すぎると財産分与の対象にはなりにくい傾向があります。

すでに退職金を受け取っている場合

配偶者が退職金を受け取っていれば財産分与の対象となります。ただ、退職金を受け取ってから時間が経っており退職金の対象となる財産が残っていなければ財産分与の対象とならない可能性があるので注意しましょう。詳しくは「熟年離婚の際の財産分与では退職金も請求できる

年金分割

年金分割(ねんきんぶんかつ)とは、夫婦の共同財産として積み立てられた厚生年金保険料を決められた割合で分割することを言い、専業主婦が離婚した場合の年金水準の低さを解消するために始まった制度です。年金の内容としては、専業主婦の場合に夫が払った保険料の一部を妻が払ったものとして、最大半分の年金を獲得することができます。

年金分割の分け方

年金分割には合意分割と3号分割の二つの分割方法があります。

・合意分割

平成19年4月1日以後に成立した離婚が対象で、夫婦間での分割すること及び、分割の割合についての合意が必要となる方法です。分割割合は2分の1が上限です。

・3号分割

平成20年4月1日以後に成立した離婚が対象となり、合意は不要であり、分割割合も2分の1に固定されています。

年金分割の対象期間は婚姻期間中のみ

夫の年金は半分もらえるはずと思っている方が多いですが、年金分割の対象になるのは報酬比例部分のうち、結婚していた期間に対応する分だけとなります。また、分割できる年金はその期間に対応する「年金の2分の1が上限」ですので、必ず半分もらえるというわけでもないことに注意が必要です。

請求期限は離婚してから2年以内が原則

離婚した日から2年以内に年金事務所で手続きをしないと受け取ることはできません。自動的にもらえるわけではないので、注意が必要です。詳しくは「離婚と年金分割|分割できる年金の種類と年金分割の全手順」をごらんください。

 

熟年離婚の実情|50代を過ぎてからの離婚について

熟年離婚をする夫婦の多くが50代の夫婦になります。熟年離婚の定義としては、「結婚から20年以上経っていること」という基準があり、これをすぎれば一律で熟年夫婦として見なされます。

今は女性でも生活力がある人も多いですが、これが50代の女性となると、この世代の自分よりも旦那をたて、旦那の支えるのが主婦の鏡とされてきた世代です。

それが夫の定年で仕事がなくなり、家に長時間いつつけることに苦痛を感じるようになり、外で仕事をしていて家にいなかったからこそ安定していた結婚生活も、精神的にも不安定になってしまい、「離婚」という決断に至るケースが多くあります。

また、社会的にも離婚に対するマイナスイイメージが払拭されてきて、離婚に対して消極的ではなくなったのも要因としてあるでしょう。ただ、今まで専業主婦だった女性が離婚をすれば生活が苦しくなる可能性が大いにあり、就職経験や社会人経験がない場合はなかなか難しくなります。

だからこそ、慰謝料や財産分与などをしっかりする必要があるのです。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。熟年離婚の場合は子供の真剣や養育費で悩むことも少ないと思いますから、自分のことを考えて進めていただくのが良いかと思います。

 

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ABOUTこの記事を監修した法律事務所

2016年1月に寺垣弁護士、佐藤弁護士の2名により設立。現在の在籍弁護士は14名(2018年1月時点)。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。